穂高小屋番 レスキュー日記

 

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わたしが山で演奏することができるのは

この人に認めてもらえたからです。

 

誰もが簡単に踏み込めるわけではないその場所で

ましてや大して登れもしない小娘が

“そこで演奏してみたい!音が聞きたい!”

と言ったところでまず通るはずのないこと。

 

でもそのためだけに山用楽器を海外まで直談判して手配したり

荷揚げはしないで自力で行くといった根性を!?笑、認めてくれ

山岳人に絶対的な信頼がある八郎さんのイベントとして

大きな山フェスに一緒に出してくれたから、

今のアウトドア好きサックスな私がいます。

 

苦手なもの 空腹

 

という私を大笑いしてくれた八郎さんは

穂高の番人として多くの登山客や山好きに慕われ

たくさんの命を救い時には見届けてきた超人です。

昨年の春先に突然お空に行ってしまったことが

未だに信じられないでいます。

 

山岳映像カメラマンでもあり

美しい作品をたくさん発表してきた八郎さん。

ご家族の意向で”ありがとう上映会”という形で

ハチローさん大好きなみんなで全国で上映会をして、

私も少しだけだったけれど参加させてもらいました。

それでもまだフワフワと信じられずにいて。

 

お相撲さんじゃないけれど、

わたしはこの人に赤子を抱いてもらいに

山道を7時間歩いて行こうと本当に思っていました。

でもわたしの産後の肥立ちが良くなくて

1年経ってやっと標高400mもない裏山の金華山に

ゆっくりゆっくり登れるようになったところ。

だから、そもそも諦めるより仕方のなかったことだとはいえ、

それでもやっぱりアーーーァという気持ちにまだなります。

 

そんな気持ちも抱きつつ、

八郎さん大好きな人たちがまとめたこの本をめくると

“なんなんだろうか、この存在感。笑。”

といいたくなるほど八郎さんの声が聞こえる。

これはきっと彼を知る人はみんなそうじゃないかな笑。

標準語の文字も関西訛りに見えてくる。笑。

 

山好きな人には景色や温度も生々しく、

そうでない人にはまるで小説のような本当の話に

あっという間に読了するんじゃないかな。

 

粥川なつ紀